2014年1月20日月曜日

メイジーの瞳(2014年)



メイジーの瞳

監督:スコット・マクギー、デヴィッド・シーゲル、原作:ヘンリー・ジェイムズ、出演:ジュリアン・ムーア、アレキサンダー・スカルスガルド、オナタ・アプリール、ジョアンナ・ヴァンダーハム、スティーヴ・クーガン。


NYに暮らす6歳のメイジー。アートディーラーの父とロック歌手の母(ジュリアン・ムーア)が離婚、彼らの家を10日ごとに行き来することになる。元ベビーシッターのマーゴが父の新しい奥さんになり、母の新しい夫リンカーンも加わり、メイジーは大人たちの身勝手な事情に振り回されていく。


ナカメキノ」にて、公開に先行して鑑賞。
このイベントでセレクトする作品がかなりツボなので、期待して観たみたところ、期待以上の作品でした。


※以下、ネタバレ含む。

メイジーの視線
『メイジーの瞳』が表すように、この作品はすべてメイジーの視線=メイジーの瞳に映るものだけが描かれています。なので、メイジーの知らないこと、見ていないことは徹底して描かれていない。そのあたりは原題の『What Maisie Knew(=メイジーの知っていること)』がよく表しているかも。
カメラの高さも低く、6歳児の目線の高さを意識しているみたいです。

メイジーの視線を通して大人たちの世界を見ると、子供が意外といろんなことを見ていること、そして見ていないフリをしていることを思い知らされる。メイジーは大人たちの喧嘩や恋愛関係…など、本当はいろいろなものを見ていて、でも気づかないフリをしている。その映像の表現も秀逸で、メイジーが見ていないフリをして、視線を逸らすものだから、観客として観ているこちら側からすると、チラっと視界に入り込むパパとマーゴや、遠くで聞こえる大人たちの喧嘩などすべてを知ることができなくなってしまう。6歳児がとっさに「これは見てはいけないもの」と判断するのに対し、こちら側は「んん?」と案外にぶい反応をしてしまうのが、結構リアルかもと思った。メイジーは頭で考えてそうしたわけではなくて、“本能的”な判断でなのだろうから、子供の洞察力はなめてはいけないな。


メイジーの選択
メイジーは大人たちに振り回され、最後にある選択をします。
それもまた“本能”での選択なのではないかと感じました。パパもママももちろん大好き。だけど、夜の街に取り残されたひとりぼっちになったとき、帰りたいと名前を出したのはマーゴだった。一緒に遊んでくれて、楽しませてくれるのはリンカーンだった。ある時からパパとママの登場が明らかに減っていきます。さっきも言ったように、この映画はメイジーの視線で撮られているので、メイジーの世界にパパとママはいないということを、何よりも象徴しているのでしょう。

ナカメキノの鑑賞後のトークショーで映画文筆家の松崎さんが「どの世界が一番幸せなのか、パパとママが仲良しの世界よりももっと幸せなのは、メイジーのいない世界。」というような話をしていました。確かにそうでしょう。残酷だけど。メイジーもきっとパパとママの喧嘩も、パパとマーゴがうまくいかなかったのも、ママとリンカーンがうまくいかないのも、全部自分のせいだと感じている。じゃあ、メイジーが「自分させいなくなれば」という発想になるか?と、言ったらならないんじゃないかと感じました。メイジーはたぶん“本能”で生きていく選択をして、生かしてくれる人を選択したのではないでしょうか。
6歳の女の子に「自分させいなくなれば」なんて想像をさせたくないという、願望も含め、マーゴとリンカーンがうまくいくことを願います。メイジーの存在を肯定できる「メイジーがいたこと」がつなげた縁なのだから。



すごくワタクシゴトを少し。
両親の喧嘩のシーンを見て、いろいろ思い出しました。小さい頃のことを。隣の部屋で喧嘩している声、気になるけど聞いちゃいけない感じ、何かが変わっていく予感、知らない大人、その人と仲良くなる術、変わってしまった生活に違和感を感じていないフリ、知らないフリ、気づかないフリ、あほのフリ、子供のフリ、大丈夫なフリ。
当時のことは、正直あまり記憶にないのはそんないろんな“フリ”をしていたからなのかもしれない。したたかな子供だったのかもしれないし、メイジーを見ていたら、もしかしたらどこかで“本能的”に、生きていくためにそんないろんな“フリ”をしてきたのかもしれないと感じました。
子供は全部見ているし、知っているけど、その先のことはやっぱり考えてはいないんだと思う。その先は“本能”できっと選択しているんじゃないでしょうか。
うちも6歳くらいで離婚していて、その当時の自分に照らし合わせるとそう思いました。

メイジーが最後に、桟橋を走っているところを見てものすごい生命力を感じました。生きていくんだ、という。それもやっぱり、“本能”から湧き出るような。




他にも、ものすごくいいシーンが盛りだくさんで言いたいことはいっぱいあるんだけど…、ファッションもものすごくかわいいし、映像もすてきだし、アレキサンダー・スカルスガルドもめちゃくちゃかっこいいし。

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