『
大人ドロップ』
高校3年生の4人の若者が、焦りや不安を抱きながらも子どもから大人へと変わろうとするひと夏を描いた青春映画。原作は樋口直哉の同名小説。若手実力派・池松壮亮が主演、ヒロイン役に「桐島、部活やめるってよ」「あまちゃん」の橋本愛。監督・脚本は「荒川アンダー ザ ブリッジ」の飯塚健。
高校3年生の浅井由は、夏休み直前、親友のハジメに頼まれ、彼が思いを寄せているクラスメイトの入江杏とのデートをセッティングしようとするが、そのことが原因で杏を怒らせてしまう。そのまま夏休みに入ってしまった上に、杏が学校をやめて引越してしまうと聞き、由は心にモヤモヤとしたものを抱えた日々を過ごす。一方、大人になるために何かと経験を急ぐ女友だちのハルからは、年上の彼氏との恋愛相談をもちかけられ、周囲が大人になろうとしていることに由は焦りを感じ始めるが……。(以上、映画.com)
高3ならではの時間が、まさに描かれているという感じ。
要するにその当時ならではの“焦り”のようなものなんだけど。
仲良くっても、一緒にいても、気持ちはそれぞれの方向を向いていて、その方向も定まっていない時。
俯瞰した態度でひょうひょうといる由が、実は誰よりも現実を客観的に見れていなくて、周りのみんなが大人になっていくのを知って、密かに焦っているところ、それを表に出さないところがリアル。
由からすれば、大人に見える杏も「大人になりたい」と思っていて、
いつまでも子供だと、ちょっと上から見ていたハジメが実は現実を受け入れられている大人な面もあったり、
背伸びして大人ぶっているハルも、まだまだ子供だったり。
「大人ってなに?」っていう感じなんだけど、ただただ漠然と“大人”になりたかった頃。
今から見れば、「大人になりたい」って発想がそもそも“子供”なんだけど、
なりたかったはずの“大人”になんて、今もなれてないし、今でもまだ「大人ってなに?」という感じなんだけど。
(むしろ、今の方が「大人ってなに?」って感じかも。)
「大人になりたい」と焦っている高校生の中で、香椎由宇の役どころがすごくいい!
大人になればモヤモヤした気持ちも、悩みも、説明できない感情も、不器用な振る舞いもなくなると思ってるんだけど、
年齢的には大人なはずの香椎由宇が、悩んだり、泣いたりしているわけで。
香椎由宇もちょっと無邪気さのある大人という役どころで、君たちの言ってる「大人ってなに?」と言っているようで。
その辺りのさじ加減がすごくいいなと思った。
あと、“正義”や“正しさ”についての考え方も。
高校生の子たちがやたらと「それは正しいこと?」という言葉を発し、正しい、正しくないで物事を判断していく。
そして、いつも「なんで?」「どうして?」「よくわからない」と答えを求める。
そこがまあ、子供なんだよね。
正しい、正しくないで判断できることなんて、現実にはほとんどなくて、
答えなんてどこにもなくて、よくわからないことだらけだし、そこに折り合いをつけて、わからないものをわからないままにできることが大人なのかもしれないなと思った。
正しさや答えのない現実に対しての香椎由宇は、やっぱり大人なのかもしれない。
そういう立場の役どころとして、美波が演じる農家の嫁リリーさんも一応いたんだけど…
個人的には香椎由宇が素晴らしすぎて、あまりひっかからなかった。
全体的に若干説明しすぎな感じが気になったのと、ハルの演技が妙にうさんくさくてイラっとしてしまったのは否めないかな。
最後の一言がない方がよかったんじゃないかと…。みんな思うことだから、言わなくても大丈夫だよーって…。
でも、香椎由宇だけじゃなくて、池松君と橋本愛の演技はすごくよかった。
橋本愛の美少女感がまた復活してた!
ちょうど、最近高校時代のこと思い出したりしてたから、自分も今思えば、あの頃早く大人になりたいと思ってたわ。
ここから抜け出せば、この先の未来は何があるんだろうって、ちょっと先ばかりを見ていた。
俯瞰して、ふわふわとそこにいない感じでいたし、何も考えてなさそうな人に対して、上から見てたし。
まさに由だったなと。
でも、やっぱり今思い出すと…痛いよねw