2014年1月20日月曜日

死ぬまでにしたい10のこと(2003年)



死ぬまでにしたい10のこと』2003年

イザベル・コイシェ監督・脚本。原作はナンシー・キンケイドの短編。
サラ・ポーリー主演。
原題は『My Life Without Me』

カナダのバンクーバーが舞台。幼い娘2人と失業中の夫と共に暮らすアンは、ある日腹痛のために病院に運ばれ、検査を受ける。その結果、癌であることが分かり、23歳にして余命2ヶ月の宣告を受けてしまう。その事実を誰にも告げないことを決めたアンは、「死ぬまでにしたい10のこと」をノートに書き出し、一つずつ実行してゆく。


淡々と進んでいく日常が、リアルで、あまりにも淡々と進みすぎる日常がアンのゆるぎない決意を物語っているように感じた。

彼女の“死ぬまでにしたい10のこと”は以下。
1.娘たちに毎日愛していると言う
2.娘たちの気に入る新しいママを見つける
3.娘たちが18歳になるまで毎年贈る誕生日のメッセージを録音する
4.家族とビーチに行く
5.好きなだけお酒と煙草を楽しむ
6.思っていることを話す
7.夫以外の男の人と付き合ってみる
8.誰かが私と恋に落ちるよう誘惑する
9.頬の感触と好きな曲だけしか覚えていない刑務所のパパに会いに行く
10.爪とヘアスタイルを変える


余命ものの映画やドラマは多いが、ここまで残された家族への愛に満ちた映画、そして、残り少ない人生を悔いを残さず過ごすかということを描いた映画は少ないんじゃないだろうか。
ものすごく劇的な偉業をやり遂げるでも、ドラマチックに思いを伝えるのではない。23年間の彼女の人生の中から湧き出た10の“したいこと”は、ごくありふれたもので、何てことのないことだ。でも、とにかく家族への愛に満ちている。

7、8については、賛否両論あるが、17歳でファーストキスの相手と結婚し、出産したアンにとってはものすごくリアルなことなんじゃないだろうか。夫のことはもちろん愛しているし、大切だけど、死を前にして夫しか知らないことに対して思うところがあっても当然だと思う。23歳だよ。死を前に、あったかもしれないもう一つの人生に思いを馳せたなら、アンにとっては選ばなかった方の人生を少し経験したいと思いついて不思議はない“やりたいこと”ではないのだろうか。

お母さんが何も告げず、急に死んでしまえば当然悲しいだろう。だけど、アンの本心、決意を知ったとき、きっと残された人々も救われるはずだ。その決意を伝える役目として選ばれた医師が、すごくいいと思った。彼なら、彼女の意志をきちんと伝えてくれるだろうと。

原題の『My Life Without Me』。私のいない、私の人生。
タイトルは原題の方が素敵かな。アンがやったことは、“私のいない、私の人生”が少しでもいいものになるよう願ってしたことなのだから。


余命をテーマにしつつも、淡々とすすむストーリーと、ポップな色遣いで、暗くならず、アンが残したかった“私のいない、私の人生”そのもののように見える。

0 件のコメント :

コメントを投稿