2013年11月24日日曜日

さよなら渓谷(2013年)



さよなら渓谷

原作は吉田修一による、同名小説。大森立嗣監督、真木よう子主演。

※ネタバレあり

「TAMA映画祭授賞式」で鑑賞。
ごく普通の夫婦が、隣家でおきた殺人事件をきっかけに、大森南朋演じる記者である渡辺が二人の過去を探っていくストーリー。

最初は、観ている側も全く二人の過去について知らず、「ごく普通の夫婦」の状態で始まる。徐々に真木ようこ演じるかなこの行動や表情に不穏な陰りが見え始め、大西信満演じる俊介が逮捕される。かなこの証言によって。

「かなこがそう言ったんですか?」の後、すべてを受け入れるような俊介の表情が印象的だった。そこから、渡辺が調べてきた二人の過去のストーリーが入り込み、少しずつ明らかになっていくのだが、観ている側としても渡辺同様に知っていくので、少し知る度に「まさかそんな残酷な…」という気持ちになっていった。

釈放後、かなこのもとに帰る俊介と、「おかえり」といってチャーハンを作るかなこに違和感を覚え、二人でスーパー銭湯に行き、俊介の注ぐビールを飲むかなこに気持ち悪さを感じた(そのシーンの前に流れた過去のシーンでは、「やめて」とコップを塞いでいた)。

その時点では、過去に俊介がしたことで、かなこは俊介へ復讐していること、俊介は償いをしていることが明らかになっており、何事もなく「ごく普通の夫婦」であることが、気持ち悪かった。

なぜ、一緒にいるのか?

当初は復讐のためであり、償いのためであった。
釈放後、かなこのもとへ帰り、二人でいる姿を観ると、再び「なぜ一緒にいるのか?」が分からなくなり、混乱してしまった。
「私達はしあわせになるために、一緒にいるんじゃない」という、かなこの言葉が頭にループしながら。



その後、かなこに去られた俊介のもとに、渡辺が現れる。
「僕達は一緒に不幸になろうと約束したんです。幸せになりそうだったから、去ったんです。」という、俊介の言葉で全てが腑に落ちた気がした。

最後に、渡辺が「彼女と出会った人生と、出会わなかった人生の、どちらの人生が良かったですか」と聞くんだけど、その疑問はきっと誰もが思うところだろう。でも、皆まで言うな!と、思った。気になるけど、ここでその答えを俊介が答えていたら、私はきっとこの映画をよく思うことはなかった。がっかりしていたと思う。答えず、俊介の表情で終わるこのラストで、がっかりせずに済み、ほっとしたままエンドロールを観ることができた。(原作がどういうエンディングなのかは知らないが、この質問はなくてもいいような気がするす、あることでよくなった気もする…)

二人の関係や愛や復讐について、うまく説明できる言葉がまだ見つからないけれど、門語りにも、二人の関係にも納得できるラストであった。


同じ吉田修一原作で、テーマとしても似ている「悪人」とどうしても比べてしまうが、観客の目線と同じ渡辺というキャラクターがいたことで、物語に入り込むことができたのではないだろうか。
(「悪人」は、誰にも共感できず、ただ気持ち悪いという印象だけが残った…)

それにしても、真木よう子の不幸な役はすごい。ただの不幸女ではなく、不幸だからこその色気というか…。
授賞式で、「この役を他の人が演るのを観たくなかった」と、言っていたが、真木よう子以外の人が演じるかなこを想像できない。





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