2013年11月13日水曜日

舟を編む(2013年)


御法度』以降の、松田龍平の代表作になりうるだろう『舟を編む』。

2012年に本屋さん大賞を受賞した三浦しおん原作の同名小説の映画化。
石井裕也監督、松田龍平主演という同世代コンビで作られ、2013年9月に日本映画製作者連盟により第86回アカデミー賞(英語版)外国語映画部門日本代表作品に選出されている。


舟=辞書、編集=編むという、辞書編集の15年に及ぶ物語。
言葉遊びとか、そもそも論好きの説明したがりな、文系かつ理系な思考にはたまらない映画。

辞書編集の15年という歳月を経て、変わるところと変わらないところを演じきっている松田龍平が秀逸!
劇的に変わるわけでもなく、変わらないわけでもなく、とにかくマジメを一貫しているんだけど、コピーにもなっているが、本当に「マジメって、面白い。」。
馬締くんも、面白い。

それでもって、熱い映画。
石井監督が「静かな情熱を表現したかった」という話をしていたけれど、まさにそれが表現されている。

たぶんこの映画の作り手の情熱も伝わってくるからだろうな。
撮影に入る前に、監督と龍平はすごく議論したと言っていたし、そういうこだわりが映像の中だけでなく、パンフレットとかにも出ている。

【丁寧】にものづくりをする様子を、ものすごく【丁寧】に描きだしている映画だと思う。

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てい—ねい【丁寧】
[名・形動]
1 細かいところまで気を配ること。注意深く入念にすること。また、そのさま。「アイロンを―にかける」「壊れやすいので―に扱う」
2 言動が礼儀正しく、配慮が行き届いていること。また、そのさま。丁重(ていちょう)。「―な言葉遣い」
3 文法で、話し手が聞き手に対して敬意を表す言い方。→丁寧語
[派生]ていねいさ[名]

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4校で致命的なミスを発見し、みんなで編集部に泊まり込むくだりがある。
あそこの描写は懐かしいものがあった。

埃っぽい部屋や、サンダル履きの素足をボリボリとする描写で、
「ああ、きっと部屋からは、人間のにおいがするんだろうな~そして、しんどいんだけど、きっとテンションは高いはずだ。」と伝わってきた。

かつてあそこにいたことを思い出した。
あの妙なハイテンションとエネルギーと仲間を私も知っていると。





やっぱり【丁寧】というのは、たどりつきたい理想のひとつだ。
【丁寧】に何かを作ることや、向き合うこと、暮らすことをしたくなる映画だと思う。
できたらあの懐かしいエネルギーと仲間と共に。


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追記

2013/11/23 TAMA映画祭授賞式で再鑑賞。

3回観ても、おもしろい映画ってすごいと思う。懲りずにドキドキして、わくわくして、馬締君の丁寧な姿勢にあこがれ、彼と彼を取り囲む人々をもっと好きになった。

今回もたぶんフィルムでの上映だったと思う?(違うかな?上映後の授賞式で予告が流れたけど、映像のきれいさが違ったし、映写室にデジタルのとフィルムのがどっちも見えた気がする。)
もしそうだったら、フィルムで上映できるところでは、フィルムでなるべく流すようにしているのだろうか。個人的には、フィルムのがこの映画の雰囲気にはすごく合っているの好き。


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