2013年のマイベストは?と聞かれれば、間違いなくトップ3に入る作品。
吉田修一の小説を、2013年に監督:沖田修一、主演:高良健吾で映画化。
1回目は、公開直後に劇場でひとりで鑑賞。
鑑賞後、“にまにま”してしまう後味が印象的だった。
3時間の間、世之介といて、帰る頃には、まるで本当に一緒にいたかのような錯覚に陥ってしまった。
やさしいとも違うし、ほっこりでもなく、ただただ“にまにま”してしまう。
そして、世之介がいなくなった後、冷静に考えてみると、これはとてもありふれた日常の、ありふれた残酷さというか、切なさのようなものを孕んでいるなと。
しょうこちゃんと世之介は「またね」と言って別れるところなんて特に。
しょうこちゃんと世之介のお別れがまたね」だったように、あの時ふたりとも「さようなら」って言わなかったように、「また」があると何の疑いもなく別れ、そのまま「また」が来ないなんてことはよくある。今なら分かる。
よくあるが故に、胸のどこか隅っこにひっかかり、ふとした瞬間に思いだし、傷んだり、懐かしんだり、悔やんだりする。
よくあるそんな不意の、永遠のさようなら。
世之介の周りの人々はみんな、同じようにふとした瞬間に思いだし、そして「ふふふ」と笑う。
そこがすごくいい。一緒になって「ふふふ」とにやけてしまうのだ。世之介だから。
高良君の演技も、「ふふふ」に相応しい、嫌味のない「いるいるこういうやつ」感がまたすばらしくて、さらに“にまにま”してしまう。
2回目にこの映画観たのは「ナカメキノ」というイベントで、真夏の夕暮れに屋外で鑑賞。
日没待ちのゆるさとか、蒸し暑さ、ぬるくなっていくビール、蝉の声、だんだん夜になっていくグラデーション、スクリーンに映りこむ車のライト、目黒川の音、風の気持ちよさ。
全部が『横道世之介』という映画にシンクロしていたように感じた。
(この話をすると、いつも世之介が洗面器に足をつっこんでラーメンを食べてたシーンと共に思い出す)
あの日も楽しくて、思い出して「ふふふ」とにやけてしまう一日だった。そういえば。
そういう、思い出して「ふふふ」とにやけてしまう魅力がふんだんに詰まった映画だと思う。
その時のトークショーで知ったんだけど、映画の奇跡もいっぱい詰まってるしね。
そんなことを思い出していると、また「ふふふ」とにやけ、また何度でも世之介に会いたくなってしまうのです。
好きなシーンは
『名前何?」 「加藤」 「うそ!?俺横道!」と「西友でそろえてみました!」っていうところ。
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追記
2013/11/23 TAMA映画祭授賞式で再鑑賞。
4回目でも、笑って、ほっこり、切なくなった。
きっとまた世之介には、会いたくなると確信した。
沖田監督のスピーチを見て、この人だからこの映画を撮れたんだなと思った。
沖田監督も世之介と同じような魅力的な「普通の人」オーラがをまとっていて、みんなに愛されていて、かわいらしかった。
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