2013年12月7日土曜日

箱入り息子の恋(2013年)


箱入り息子の恋

ミュージシャンとしても活躍している星野源の映画初主演作品。監督は市井昌秀。

35歳、市役所勤務。出世欲も恋愛経験もなし、趣味貯金、童貞の天雫健太郎と、盲目の美少女・今井菜穂子。将来を心配したそれぞれの両親が行った代理見合いで出会い、恋をする。


まず、思ったのが、恋してるときのダサさ、滑稽さと言ったら!
不器用な探り探りの、それでいて繕うことを知らないピュアな恋は、見ているこっちがドキドキにやにたしてしまうくらい歯がゆい!

これは盲目の少女との障害を越えた恋では、決してない。
むしろ、健太郎のコミュニケーション障害の方が、やっかいな障害だった。
そんな、今まで会社と自宅の往復(昼休みも実家に帰る!)で、出世もしないまま同じ仕事を13年間し続け、狭い世界にしかいなかった健太郎は、菜穂子と出会い、恋をして、その世界から飛び出して行く。

手をつなぎ、キスをして、牛丼を食べ、菜穂子といろいろな話をする。今まで見えていなかった周りの人のことも見えてくる。会社の帰りに同僚と飲みに行き、昇進試験を受け、会社を初めて早退する。

恋をしなければ、知ることのなかった、辛い気持ちも同時に知ることとなる。自分の不甲斐なさや、気持ちのすれ違い。うまくいかないことだらけだ。街で見かけて思わず、追いかけてしまう。二人で行った牛丼屋は、今では対岸で見守るしかできない。そんな自分を菜穂子は知ることはない。見えないから。

だから、伝えなければいけない。
ベランダから菜穂子に会いにいくシーンは、きっとロミオとジュリエットのオマージュなんだろう。でも、実際の恋愛って「おおロミオ~」「ああ、ジュリエット~」なんて、おしゃれじゃないでしょう。走って、ぐしょぐしょになって、心底ダサいもんでしょう。

おしゃれな映画のような恋愛ももちろんいい。憧れる。
けれど、健太郎の恋みたいな無我夢中で必死な恋を自分はまた出来るのだろうかと、うらやましくもなった。
きっと誰もがこういうダサい思いをしたことがあり、傷ついたことがあると思う。
でも、傷ついてもダサくても、こんな恋って悪くないよね、と思わせてくれる滑稽さがあった。
ダサくなれるほど、人を好きになるって、ちょっといいかも、と。


最後に、今、ダサい童貞男を演じさせたら星野源の右に出るものはいないと思う。






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