2014年3月10日月曜日

大統領の執事の涙(2014年)



大統領の執事の涙

綿花畑の奴隷として生まれたセシル・ゲインズは、1人で生きていくため見習いからホテルのボーイとなり、やがて大統領の執事にスカウトされる。キューバ危機、ケネディ暗殺、ベトナム戦争など歴史が大きく揺れ動く中、セシルは黒人として、執事としての誇りを胸に、ホワイトハウスで30年にわたり7人の大統領の下で働き続ける。白人に仕えることに反発し、反政府活動に身を投じる長男や、反対にベトナム戦争へ志願兵として赴く次男など、セシルの家族もまた、激動の時代に翻弄されていく。(以上、映画.com

リー・ダニエルズ監督、フォレスト・ウィテカー主演。

まず、思ったのが、アメリカにとって黒人差別という問題がいかに、永きに渡ってまとわりついてきた問題だったのかがすごくよくわかった。
アメリカの中心(=世界の中心)でさえ、黒人差別はなくなることはなかったし、どの大統領も頭を悩ませていた。教科書で知った以上に、アメリカの歴史は黒人差別との闘いの歴史だったのだと。


ただ物語の根底に差別の問題が潜んではいるが、常にその問題と直接対決をしているようには描かれてはいない。
黒人執事のセシルは、献身的に執事としてホワイトハウスに仕え、時に大統領から相談されたり問われるが決して意見を発することはない。あくまでも執事として、空気を消し、業務を行うのだ。
セシルが見てきたものは、いつまでも解決しない黒人差別の問題や、アメリカの歴史が動く事件の裏で苦悩する一人としての大統領の姿だったところが印象的だった。

父セシルが、そんな政治の中枢にいながらも、いつまでも解決されない黒人問題に怒りを覚え、その怒りが父への怒りと変わっていく長男や、仕事とはいえ家を留守にしがちで崩壊する家族になにもできないセシルに苛立ちを覚える妻、兄と反対に国のために戦場へ行く次男。

どんなに政治が混乱しようと、歴史が動こうと家族は家族で問題が尽きない。そんな歴史的転換に家族も巻き込まれていくことで、黒人問題や事件などを浮き彫りにしていく。
歴史がこのときのこの事件で、こう変わった。と、いうことが重要ではなく、その変化の中で人々は何を思い、どう動いたのかを、それぞれ別の考えを持ったゲインズ家に置き換えている。結果として、黒人問題や事件が人々にもたらしたものがじんわり胸に響いていく感じ。


そして、その踏まえた上で、オバマ政権の誕生の歴史的な位置づけを改めて思い知らされた。
私は黒人ではないし、差別も受けたことはないが、彼らにとって黒人大統領誕生という事実が、長年の夢であり、黒人差別の歴史からの脱却の重要な一歩だったのだと知り、涙があふれてきた。


フォレスト・ウィテカーの本当に空気を消した感じの表情のない(けれど、どこか悲しそうな)演技がすごくよかった。あの表情忘れられなくなる…。
あと妻役のオプラ・ウィンフリーもすごくいいキャラ!酒におぼれるわ、変な服で踊るわするけど、いい女! 長男との喧嘩のとき、普段はセシルの仕事に不満を持っていたのに、誇りを持っていたんだと分かるシーンがあるんだけど、しびれましたわ。化粧濃いけど、かわいいし。

だからこそ、最後あそこまでやってしまうのか…っていうのは、若干不満。あれ必要だったのかなあ。


あと、もっともっと歴史について詳しかったら楽しめるんだろうなと思った。ひとつひとつの事件をざっくりしか知らないから…もっと楽しめたんだろうなと思うと悔しいな。

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